美しい道具たちー西陣織ー

錘（おもり）

工房に行くと色々な重さの錘があちらこちらに転がっています。丸いものや四角いもの。お菓子のカヌレみたいな形もあります。
転がっているかと思えば、ぶら下がっているものもあります。ぼんやりしているとぶつかることもあります。

織機の重りは各地から多数発見されています。円盤状のもの，そろばん玉のような双円錐形のものピラミッド型のものと多種多様です。
その昔、古代ギリシアの機織りは上から下へと織る方式がとられたそうです。簡単に組まれた枠組みの上部に経糸を1本ずつくくりつけ，その経糸に重りをつけて垂直にぴんと張り，杼（ひ）を使って緯糸をとおす作業を繰り返して布地を織ったそうです。

整経した経糸をセッティングし、重りをのせます。経糸をピンと張って緯糸を通すのは時代も場所も問わず同じ原理ですよね。その時に必要なのが錘です。

複数の帯が織れる長さの経糸を巻いたものを使っていく訳ですから、段々と糸量は少なくなっていきます。ですのでその度にピンと張れるように、職人の感覚で錘で重さの調整をします。ただたくさん重りをのせていればいいかと言えば、違います。湿度や織り方、巻いている糸の種類によって毎回同じではなく状況に合わせて重さの調整を行います。糸の種類や季節による乾燥・湿度等を考慮し、引っ張った方がきれいにできる場合や、そうでない方が打ち込みが入りやすく柄がきれいできる場合など、ケースバイケースです。
この辺りの感覚は織りながら身につけていくもので、織り手さんは感覚的に身につけ、毎日毎日試行錯誤しながら一本一本丁寧に織っているのです。