美しい道具たちー西陣織ー

糸繰と水振

織物の製作風景といえば「機織り」を思い浮かべる方がほとんどだと思います。しかし、「機織り」に至るまでに8割の作業は終了しているのです。
例えば、歌手の華々しいステージが「機織り」です。歌手がステージに上がるまでの作詞・作曲、衣装決め等様々な下準備が揃って、やっとステージに上がれるのと同じようなものです。
その下準備をきちんとできているか否かで　織物の質は全く変わってしまうのです。
織物には経糸（たていと）と緯糸（よこいと）があります。その糸がきちんと並んでいることにより、糸をスムーズに引き出すことが出来てきれいな状態で織ることができます。そのための作業が糸繰です。地味な作業ですが、とても大切な作業です。
もともと糸はスガという輪の状態で納入されます。

それを木枠に巻きなおすのが糸繰です。木枠に巻かれた糸が経糸の作業である「整経」や緯糸の作業である「管巻き」へと続いていきます。

その逆が「水振（みずぶり）」です。木枠に巻かれた糸をスガの状態に戻します。

使わなかった木枠に巻いた糸をスガに戻し、大切に保存する。
こんな小さな作業も、職人の知恵と物を大切にする日本人の心が見て取れます。
美しい道具たちには　先人の美しい精神が宿っているのです。